同性愛
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『連休が取れたから一緒にどこか行こうか』 『じゃあ、東京いこ。服欲しいから』 『いいよ。上野とか、有楽町とか? それとも銀座かな?』 『えっ、そこ百貨店しかないじゃん』 『えっ、上京して買い物するなら…
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自身の唇に指で触れる癖がついた。真木がそのことに気が付いたのは最近になってからだが、恐らく二か月ほど前から始まったことだろうとは、当人もすぐに予想がついた。丁度、タバコを吸わなくなった頃だ。 大学…
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ただ、そばにいて欲しいと思った。海田の胸にそんな想いが湧いたのは、大学の入学式当日。キャンパス内でビラ配りをしていた真木に、海田は思わず声をかけていた。 愛情に飢えていたわけではない。両親にはそれ…
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この場所には、いつだって陽が当たらない。真木が訪れる度、ここは四階建てコンクリート造りの校舎が作り出す、長い影で覆い隠されていた。 歩道の脇には芝生が植えられていて、五月ということで花壇にはちらほ…
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よく晴れた日中に部屋に篭もり、窓ガラスを通して、隣家の屋根の上、雲の少ない青い空をぼうっと眺めていると、世界からひとり置き去りにされたような孤独が感じられる。 けれどそれは、ひと月ほど前までの…
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異常な熱を感じていた。絡み付くような湿り気を孕んだこの空気に、だ。決して自分自身のせいではない。悠はそう自分に言い聞かせながら、勉強机に向かっている。 ベッドと本棚、そして勉強机だけが整然と設置さ…
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いつも通り、穏やかな日曜の朝だった。 午前十時。ようやく起き出してきた悠は、のろのろと誰もいない食卓に座る。洗濯機の音が家の奥から聞こえてくる。食卓の窓から見えるガレージには、父親の車が見えた。 …
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十二月二十三日、二学期の終業式を前にしたこの日は、祝日で学校が休みだった。私はたまたま欲しいものがあって、ひとりで近所にある大型ショッピングモールを訪れていた。店内には、軽快なジングルベルが流れてい…
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本が好きだ。静寂が好きだ。ページを捲る微かな音が静寂に融けていく瞬間が、堪らなく好きだ。 澄香は、読書をする時間というもの自体を愛していた。幼い頃から、彼女はそういう性質だった。他のこどもと遊ぶよ…
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普段であれば消毒液のにおいで満たされている清潔感のある室内に、不釣り合いなバターの香りが漂う。濃厚なそれの中に、華やかなバニラの芳香を感じとれば、にわかに目眩が誘われた。 「注意力散漫。これで何回目…