小説

  • にわかぱんだ好きに興味ありません。(2)

     先日の一件以来、結局篠沢の白衣は、合わせをとめずにだらしなく開かれたままにされている。あの後、逆井が『とりあえずやればわかる』としつこく薦めてきたものだから、篠沢は半信半疑ながらも実行に移すことにし…
  • にわかぱんだ好きに興味ありません。(1)

     同じ言葉を一体何度耳にしたか、彼はもう覚えてなどいない。 「ねぇ、篠沢君って動物行動学が専攻だったよね?」  資料の書籍に目を通していた最中だっただけに、突如として現れた女性のその台詞は、余計に篠沢…
  • ハキリ

     古い友人が失踪したのは、もう三年も前のことだ。事件性のない家出としてまともに捜査もされず、彼はそのまま消失した。  彼がいなくなったことで、世界の何が変わるわけでもない。それは至極当然の流れだ。世界…
  • アシナガ

    重苦しい鉛色の空が、低く唸る。  湿り気を孕んだ空気は既に飽和状態。雨が降り出すのも時間の問題だろう。  窓の外をちらと見やりながら、そんなことをぼんやりと考える。  天候のせいか気分はぐずぐずと燻り、午後の仕事を仕上げる気力はとうに失せていた。
  • その柳の下に[電書版v1.0]

    長編/約12万字/BL/大正~昭和初期/歳の差 湯治場の宿屋に生まれた順二郎は、片足が不自由なことから、父親によって納屋に軟禁され暮らしていた。 そんな彼が、震災で焼け出され療養に訪れていた柳という男…