属性:白衣
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それは、決して不快とは言い難い苛立ち。開かない窓越しに、積りゆく新雪を眺めるしかない幼児の心境に似ていたかもしれない。 「何で速水先生は描かねえの」 机上に広げられたスケッチブックは、隅だけが適当…
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篠沢を顎でダウンさせた人物は、伊奈理沙子。 中国に留学していて、日本に戻ったのはつい先月のこと。 本日より篠沢たちの所属する辻研究室に入るのだという。 今年で二十三歳だというが、篠沢にはとても…
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院生が主に利用するのは、校舎の南棟と呼ばれる部分。 そこはほとんどの教室が研究室で占められているので、南棟よりも研究室棟という呼称のほうが実際はよく使われる。 極稀に行われる院生用の講義は、校舎…
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先日の一件以来、結局篠沢の白衣は、合わせをとめずにだらしなく開かれたままにされている。あの後、逆井が『とりあえずやればわかる』としつこく薦めてきたものだから、篠沢は半信半疑ながらも実行に移すことにし…
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同じ言葉を一体何度耳にしたか、彼はもう覚えてなどいない。 「ねぇ、篠沢君って動物行動学が専攻だったよね?」 資料の書籍に目を通していた最中だっただけに、突如として現れた女性のその台詞は、余計に篠沢…