シリーズ
-
-
-
《赤で繋がれた光と闇の主従》 天球が、黄昏の色を抱いている。天に向かって高く聳えるは、四方が階段状になった台座。夜闇の色をしたその頂きには、月の輝きを放つ玉座が据えられていた。 その椅子に人の姿は…
-
-
-
《モノクロの遊戯に興じる黄金の天秤》 暖かな硬さだ。足面につぶさに感じられるのは。 硬質なそれを一面埋め尽くすのは、正方形の白、或いは無限に続く黒い格子。剥き出しの足指で白と黒の境界に触れてみるが…
-
-
-
《白と黒の世界でペンは踊る》 木製の軸に差し込まれた、先端ほど幅細く尖り、やや湾曲した金属板。その中心に小さく楕円の穴があけられており、そこから金属の先端部分を真半分に割るように、切れ目が走っている…
-
-
-
《彼だけに見える愛しき景色》 くすくすと、膝をくすぐられるような感触。足元に視線を落とす。長く細い草の群が、私をからかうように、膝頭に触れては離れる。肌を撫でるのは、涼やかな風。私の鼻先を、頬を、唇…
-
-
-
《淫らな妖精は甘い蜜を纏う》 もし一面に広がるこの色が、一般的に云われる『肌色』だとすれば、私たちの肌とはなんと淫猥な色をしているのだろうか。 両足が踝まで、ふぬり、と埋まる。柔らかく、そして…
-
-
-
《電脳の空と海に沈む》 眼前に広がる鮮やかで透んだ青。その中へ飛び込み、奥へ、奥へと進んでいく。肌に感じるのは流れる水の冷たさ。私は水の中を飛んだ。手を動かさずとも、足をばたつかせずとも『奥へ行きた…
-
-
-
《可憐な白い花の愛する箱庭》 鈍色の空から大粒の雨が無数に落ちていた。それらひとつひとつが、大地に触れ、また草木に触れ、そこから慎ましやかで優しげな生命の香りを引き出し、辺りに充満させている。 こ…
-
-
-
《玻璃の樹木たる少女は微笑む》 闇の中心に、重厚な木製扉が据え付けられていた。闇と扉とを繋いでいるのは、扉の左端にあるふたつの蝶番だ。そしてそれは、銀色をした細身の針で留められていた。針の後端には、…
-
-
-
《人間じみた電脳の呟き》 視界一面に広がる無機質なスカイブルーが目に刺さる。ヘッドマウントPCに搭載された有機ELディスプレイの発色は、液晶より格段に良く、美しくもあるが、しかしながら決して目に優し…
-
-
-
ふと目を奪われたその鮮やかな色を、私は『黄緑』としか表現できない。 立ち止まってそれをじっと見ていたら、彼が気付いて「綺麗なライムグリーンだね」と言った。こんな些細なことでさえ、ふたりの間に確かな…