属性:社会人

  • 不器用な君と恋していく方法

     鳥羽千波ちなみの記憶は、幼馴染みである伊勢嶋史樹ふみきの花綻ぶような笑顔で始まっている。 『ちなちゃん、これ、もらってくれる?』  まだ小学生にもならなかった頃、史樹から突然差し出されたのは、ジュズ…
  • おじさん、責任をとる

    「おじさん、ちょっと書いて欲しいものがあるんだけど」  朝からひとりで出かけていた彼は、夕方帰宅するなり、リビングのソファで寛ぐ私の前に数枚の紙を差し出してきた。 「いいけど……これ、何?」 「転入届…
  • おじさん、マフラーを買う

     ふと目を奪われたその鮮やかな色を、私は『黄緑』としか表現できない。  立ち止まってそれをじっと見ていたら、彼が気付いて「綺麗なライムグリーンだね」と言った。こんな些細なことでさえ、ふたりの間に確かな…
  • おじさん、東京へゆく

    『連休が取れたから一緒にどこか行こうか』 『じゃあ、東京いこ。服欲しいから』 『いいよ。上野とか、有楽町とか? それとも銀座かな?』 『えっ、そこ百貨店しかないじゃん』 『えっ、上京して買い物するなら…
  • アイスな恋のはじめかた

     閉店間際のスーパーの店内は、人も疎らだ。  蛍の光がゆったりと流れる中で、私は買い物カゴを手に足早に必要なものをそこへ入れていく。  いつも仕事帰りに、このスーパーに寄るのが私の日課だった。一人暮ら…
  • 今夜も、フロントカウンターで。

     酷い雨の音が、ガラス一枚隔てたロビーにまでも届いている。エントランスの自動ドア越しに、濡れたアスファルトに反射する街頭の光が、じわりと滲んでいるのが窺えた。  フロントカウンターの内側で、笹山はそれ…

サイトトップ > 属性:社会人