要素:BL

  • 悪いのはだぁれ?

     濡れたTシャツの白い布地が肌に張りつき、うっすらと皮膚の色が透けて見えた。女のような膨らみなどない、まっ平らな胸。しかしそこに、二つの尖りがはっきりと存在を主張している。 「凪、も、しつこい……って…
  • 淫乱ヒモニートを拘束監禁しています(?)

     流川ながれかわがオーナーを勤めるコンビニの二階が、彼の住居だ。  人件費削減のための長時間労働を終え、疲れた体で二階に上がり、玄関を開けると、見計らったように奥から声がかかった。 「流川さ~ん、ねえ…
  • 耳と、ピアスと、それからぜんぶ

     ベッドに押し倒した相手にキスをしながら、その耳に触れるのは、水無瀬の悪い癖だ。舌を絡ませ、唇を食み、わざといやらしい水音をたてながら、同時に指で耳朶の端を摘まみ擦り、耳介に沿って撫で上げれば、はした…
  • 不器用な君と恋していく方法

     鳥羽千波ちなみの記憶は、幼馴染みである伊勢嶋史樹ふみきの花綻ぶような笑顔で始まっている。 『ちなちゃん、これ、もらってくれる?』  まだ小学生にもならなかった頃、史樹から突然差し出されたのは、ジュズ…
  • 有意義な食事、そして無慈悲な現実

     気もそぞろ、というのはこういうことをいうのだろう。海田は、手にした箸の先からテーブルの上へと転がり落ちた昆布巻きを、反対の手で口に放り込みながらそう感じていた。  クリスマスを過ぎた辺りから、自身の…
  • 季節と共に移ろいゆくのは

     早朝の空気が、きん、と澄んだ冷たさを纏っていた。呼吸のたびにそれが肺を満たす感覚が酷く心地よく、走る足取りも軽くなる。  見慣れた川べりの土手を横目で捉えれば、ちらほらと鮮やかな赤が見えた。前日まで…
  • その柳の下に[六章]

    六、セピヤ色の罪状    秦野の死を記したところで、私は手を止めた。否、止めざるを得なかった。どうしてこれ以上のことが書けようか。  もう、傍には誰もいない。私の元に残されているのは、白木造りのちゃち…
  • その柳の下に[五章]

    五、柳折る    ふたり以外のすべてを排除した部屋で、最後の数か月を共に過ごした私たちは、この時、身体だけは紛れもなく同一のものと化したように思う。互いに熱を奪い、与え合う。柳が望んで始まるこの行為は…
  • その柳の下に[四章]

    四、枝垂れ    西山と再会した日以降、柳は書斎に籠りがちになった。日課の散歩もしなくなった。私から散歩へ誘ったこともあったが、彼は曖昧な返事をするだけで、すぐにまた書斎に戻ってしまう。食事はすべて、…
  • その柳の下に[三章]

    三、柳煙    六月のあの夕暮れから、私たちの関係は、少し変わってしまったように思う。それはもしかすると、神保町からの帰路の途中(恐らく、私が柳の腕に縋った瞬間に)薄暮に棲む魔物が、私たちの心に入り込…