要素:ラブコメ
-
-
-
緑のにおいが実りのにおいに移り変わって久しい。木々の枝先で揺れる葉は、赤や黄色、茶色になり、涼やかな風が吹き抜ければ、たちまち飛ばされ、地面に落ち、積もっていく。あちらこちらの木の根元には、落葉の山…
-
-
-
空は高く、どこまでも青い。雲一つない、まさに日本晴れ。 そして私の目の前には、きらきらと輝く一面の黄金色。こうべを垂れているそれら一本一本は、ずっしりと重い実をつけた水稲だ。僅かに残暑の影を残した…
-
-
-
駆ける。 靴底でしっとりとした土を捉える。 髪が流れる。 夏独特の爽やかな風を肌に感じながらの疾走。 息があがる。 首筋を汗が伝っていく。 弾む心臓は、まるで自分の物ではないかのようだ。…
-
-
-
しっとりとした空気が肌を包み込む六月。窓から空を見上げれば、重厚感のある鈍色の雲が一面を覆っている。鼻をくすぐるのは、もうすぐ落ち始めるであろう雨の気配だ。梅雨入りはもう少し後になりそうだが、それで…
-
-
-
教室の壁に掛けられたカレンダーに、大きな数字の5が踊る。 高校に入学してからの最初の一ヶ月は、あっという間に過ぎ去ってしまった。入学式の際には満開だった桜も散り落ち、枝には既に瑞々しい若葉が繁って…
-
-
-
幼い頃、酪農の体験学習で高原に行ったことがある。 どこにあるなんという場所だったかは忘れてしまったけれど、そこには泊まり込みで自給自足生活を体験できるのがウリの小さなペンションがあった。 体験学…