要素:ファンタジー

  • 暗褐色の海

     遮るもののない澄みきった蒼空を背景に、大輪の朝顔がいくつも咲いている。紫苑色や紅の花弁は、空の青に良く映えるものだ。陽光をさんさんと浴び、露に濡れた朝顔は、萌黄色のその蔓すらもキラキラと輝いている。…
  • 朱色の午睡

     目が眩むような夕暮れ色に包まれて目を覚ます。ぼんやりとだが、はっきりとした意識がある。〈それ〉に形があるのかと問われれば否だが、形がないことは決して存在しないということではない。形の有無は些細な問題…
  • 朱色の再誕

     窓ガラスの向こうに広がる青い空を行く鳥たちは、どこまでも自由だ。なにかに縛られるわけでもなく、行く手を阻むものもない。  窓から柔らかな光が差し込む。窓際に置かれた和彦の机上は、そこだけが春であるか…
  • マッチョに言い寄られてました。

     学校から自宅までの道中にある河川敷。その草っぱらに腰をおろして、ぼんやりと川の流れを眺めて時間を潰すのが、高校生になってからの僕の日課だった。  そこで特別、何をするでもない。ただ、自宅で過ごす時間…
  • 冬を愛した人

     アスファルトの表面に、ゆらりと陽炎がたっている。それは決して幻想などではなく、夏特有の強い日差しで道路が熱せられたことで起こった、紛れもない現実だ。  立ち並ぶ街路樹からは、蝉の鳴き声が聞こえる。 …

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