箱詰本文サンプル

2021年08月03日

 ダウンライトの照明のみで照らされた室内はほの暗い。飾り気のない調度品。部屋の中央に置かれたダブルベッドが、この部屋の役割を明け透けに伝える。
 波打つシーツ。その上に裸体を横たえた青年は、僅かに表情を曇らせている。不安の滲む目が向けられているのは、彼の身体に覆い被さる男ではない。
 揺れる視線の先、ベッド脇に置かれた椅子。腰を下ろした座面に片足を上げ、にたりと口元を歪めるその人物。
「ちょ、っと……、ほ、本気……? ね、海里……」
 青年は乞う。海里、と彼自身が呼んだ人物を求めるように、腕を伸ばそうとする。しかし、青年の身体をまさぐる男によって、それはシーツに縫いつけられた。
 は、と吐き捨てるように海里が笑う。
「冗談で金積んでここまで準備しねーだろ、普通。ほら、せっかくなんだしお前も楽しめよ、光樹」
 彼が示す、積んだ金で施された準備こそ、光樹に跨がっている男だ。全くの第三者である見知らぬ男に、胸を、腹を、下腹に帯びた熱を弄ばれている。
「でもっ、……あ、ンっ!」
 こんなことは、聞いていなかった。いつもより愉しいことをしようと、仕事終わりにホテルに誘われて、期待に身体を疼かせることはしながらも、そこに欠片の疑いも持たなかった。持つはずもない。海里は光樹の恋人なのだから。
 幾度かの交わりのあと、仕事の疲労も重なって、ベッドの上でウトウトと舟を漕いでいた自身の身体に、まさか知らない男が跨がってくるなど、一体誰が想像するというのか。
 それでも、性感を煽る手つきで乳首を捏ねられれば、光樹の口からは甘い声が漏れる。汗で湿った裸身が過敏に跳ねた。
 くつくつと、喉で笑う気配。
「そこ、お前が好きなとこだもんなぁ。俺の手じゃなくても気持ちいいんだ?」
 含みのある言葉は、心底愉しそうな色を宿している。
 それもそうだろう。この状況は、彼の願望の体現なのだから。自分の恋人を、他の男に目の前で寝盗られるという、どうしようもない変態性癖の。
 光樹自身、そのような性的願望はないものの、海里の性癖として把握しているつもりでいた。だが、まさか突然実行に移されるなどと。
「ちが……っ、そうじゃ、な、――ッアぁ!」
 否定が嬌声にとって変わる。海里のものとはまるで違う無骨な指が、光樹の濡れそぼった後孔に侵入を始めたのだ。
 指は、蕩けた内部の感触を確認するようにぐちぐちと肉壁を掻いた。そうしてすぐに二本、三本とその数を増やしていく。
 太股に、荒い吐息がかかる。ぞう、と背筋が震えた。嫌悪に、ではない。その事実を否が応にも認識させられるのは、あまりにおぞましい。
 感覚から意識を逸らしたい一心で、きつく目を瞑る。すぐに、ちっ、と小さな舌打ちが耳に届いた。
「あー、さっきまで俺が挿れてたんで、慣らさなくてもいいっすよ。ちゃっちゃとやっちゃって。俺のをずっと独占されてるのも腹立つんで」
 言い放たれた言葉は冷たい。
 光樹の胸が酷くざわついた。
「海里、海里ぃ……」
 目を閉じたまま、恋人がいる方向に顔を向ける。もう腕は伸ばせない。必死に名前を呼ぶ。
 違うのだ、と言いたかった。本当は、海里の指以外で快楽を得たくなどないのだと。だが、それは相手の性癖を否定することでもあるから、口には出せない。彼は、光樹が他人の手で感じているところが見たいのだ。だから、ひたすらに名前を呼ぶことしか、光樹はできなかった。
 慣れた指先の感触が、不意に頬を拭う。
「光樹……泣いてんのか? 可哀想になあ。カレシが変態で、知らない男にチンコ突っ込まれるはめになっちゃって……」
「かい――」
 心の声が、彼に届いたのか。
 思わず、ぱ、と目を開けた。すぐそばに、恋人の顔。
 ――期待をした自分が馬鹿だった。光樹はすぐに思い直した。
 にったりと、下卑た笑みで、彼は口にする。
「――最ッ高に興奮するわ」
「……ッあぁアア!」
 体内を埋めていく圧倒的な質量に、悲鳴じみた声が漏れる。押し出されるようにぼろぼろと涙が零れた。慣れた感覚、しかし馴染みのない感触。すっかり恋人のぺニスを覚えた淫らな肉が、新たな侵入者の形を明確に捉えようと、必死に襞をうねらせている。
 見知らぬ男の腰が、すぐに前後運動を始めた。互いの皮膚同士が触れては離れ、離れては触れ。その度に、潤滑剤で濡れた肉壁が、ぺニスとの摩擦によって、淫猥な粘着音を鳴らしている。
「おー、根本まで一気にいったなぁ。カレシの前でケツぐちゃぐちゃにして、知らない男のチンコ出し挿れされて……なあ光樹ィ、きもちいーなあ?」
「や、ちが……、よくな……ぃ――ッ! かいり、かいりのがッ、イイ……よぉ……!」
 必死に頭を振り、訴える。それでも身体は正直だ。受け入れているのが知らない男のもので、これが光樹にとって納得のいかない行為であったとしても、彼の性器は確かに兆している。
 恋人である海里によって言葉で羞恥を煽られれば、光樹の淫蕩な脳は、快不快に関わらず、すべての刺激を性的快感へと昇華させてしまう。そういうふうに、飼い慣らされているのだ。
「そんなに俺のがいいんだ?」
 感じてるくせに、と試すように尋ねられる。
 海里の声が、鼓膜を震わす。内壁への摩擦よりも、一等背筋を痺れさせるその響きは、鼓膜の奥で三半規管を舐り、脳髄に甘く溶けていく。
「いい! 海里のが……ッ、海里、の、だけが……っ、いい、からァ……!」
 いつの間にか腕は自由になっていた。抽送を繰り返す男は、より深く奥を穿つために光樹の両腿を押さえつけている。
 身体を揺さぶられながらも、ようやくとばかりに、光樹は恋人の首元にすがりつく。
「本当に? お前のこと、知らない男に犯させるような変態のチンコがいいんだ?」
 耳道に直接流し込むように囁かれ、光樹は何度も頷いて肯定しつつ、熱い息を吐いて腰を揺すった。それによって、抜き差しされる怒張の張り出した部分が、肉壁のもっとも弱い部分を掠める。反射的に身体が反った。せっかく伸ばした腕も、あっけなく外れる。
 一瞬、光樹を貪る男の動きが止まった。それからゆるゆると出し挿れしたり、回したり、まるで何かを探るように腰を動かす。
「ひ、あアぁンッ!」
 光樹の身体が跳ねた。視界が激しく明滅を繰り返す。先ほどは掠めるだけだったそこを、今度は男のぺニスで押し潰されたのだ。海里以外の肉体で快楽を得るなんて。思いはすれど、開発され尽くしたそこを刺激されれば、反応してしまうのは道理だ。もはや為す術もない。
 甘やかな反応に気を好くしたのか、弱点めがけての抽送が繰り返される。強すぎる快楽に、もはや光樹はただされるがまま、細切れな嬌声を溢すことしかできない。
「なあ光樹、俺のこと好きか?」
 尋ねられた。……気がした。霞がかった頭でぼんやりと捉えたその言葉に、普段の強気な色は僅かも滲まない。むしろ――
「……す、すき、好き……っ、海里、好き……――ッ、や、なに、……ぁ、アッ、ン……はげし、ァアッ――!」
 堪らない気持ちに胸が押し潰されそうになって、必死に彼の想いを肯定し、同調する。
 同時に、光樹を穿つ腰の動きが速まる。ぞっとした。この動作が止まった先に起こることを、経験で察知したのだ。そしてそれを為すのが海里でないことに、今更ながら恐怖を覚える。
「俺なんか好きになって本当に可哀想で可愛いやつだよ、お前は」
 耳元で囁かれる。蕩けるような低音の響き。だが、今だけは、いけない。これ以上、自身の性感を高めることだけは何とか避けたかった。
 男が光樹の腰を両手で掴んだ。肌と肌が荒々しくぶつかりあう音で室内が満ちる。品のない呼吸と汗が、光樹の上に落ちた。肉壁の奥には届かないものの、的確に弱い箇所を狙って擦られ、光樹のぺニスは真っ赤に張りつめ、震えながらだらだらと蜜を漏らしている。
「アぁ、ンッ、や、うそ……! ァ、抜いて! や、ぁは、……んア、アぁっ! 中、は……ぁ!」
 だめ。イイ。やめて。止めないで。
 二律背反する思考でぐるぐると目が回る。
 頭の中に、真っ白な砂を敷き詰められていくような気分。
 視覚はすでに世界を捉えることを放棄した。
 ひたすらに、激しい光の明滅。
「可愛い光樹」
 ぼんやりと輪郭の曖昧な愛しい声。
 聴覚も、もはや僅かにしか残されていない。
「知らない男に中出しされて――イッちまえよ」
 腹の内側から突き上げられる、鈍い感覚。
 意識を手放す最後の瞬間に感じたのは、身体の内と外で迸る、熱。

 目を覚ました光樹の視界に映ったのは、一面の白。
「――ッ、海里!」
 反射的に呼ぶ。隣にあるべき者の名を。
 飛び上がるように上半身を起こしてから、自分がベッドの上に横たわっていたのだと気づく。衣服は何も身につけていない。
「起きたのか」
 ベッドの端、枕元に近い位置に腰を下ろしていた海里と目が合う。光樹とは違い、服はきっちりと着込んでいる。途端に、意識を失う前の諸々の記憶が思い起こされた。
「……〜〜っ」
 顔を真っ赤にして、発する言葉を見つけられないまま、力ない拳で、ぽかぽかと海里の腹の辺りに攻撃を加える。
「何だよ、怒ってんのか? 何でもしていいって、お前も言ってたろ」
 腕を捕まれ、手首にキスをされる。海里はちらと光樹を見やり、にい、と口角を上げた。
「限度ってものがあるでしょ……!」
 危うくほだされそうになるところを、頭を振って何とかやりすごす。
「それに、その、中……」
 続けざまに口にしたが、その勢いを徐々に失っていった。無意識に下腹に触れる。
 消沈した光樹の肩が、不意に抱き寄せられた。髪に、額に、頬に、海里の口づけが落とされる。唇が触れた箇所から、甘い痺れがじわりと広がっていく。
「大丈夫だって。お前は気づかなかっただろうけど、ゴム着けさせてたし。代わりにお前がオチてから、俺が何回か中出ししといたから」
「え、あ……そう、なの」
 行動と発言の、天と地ほどもある落差に、もはや光樹はただ納得することしかできない。こういう男だったな、と再認識すると同時に、それでも彼に対する感情に変わらないのだという事実も理解する。
「それより、なあ。お前、この部屋どう思う?」
 唐突に何を、と光樹は首を捻った。
「どうって……いつものラブホじゃ……」
 プレイの最中に意識を失った自分を、まさかこの男が担ぎ出してまで退室するとも考えられない。
 だが、
「……どこ、ここ?」
 すぐにここが、先程まで滞在していたホテルではないことに気づく。広さ、壁紙の色、調度品――何もかもが違う。
 部屋全体を見渡す。部屋、というよりは、箱のようだと光樹は思う。部屋の中央に置かれたベッドと出入り口らしい扉以外には何も見当たらず、かつ、ほぼ立方体をした空間だったからだ。
 木製の扉には、大きめのプレートがついている。
「『セックスしても出られない部屋』……?」


★玩具(ローター)+公開自慰+自慰指導

 生活に必要なものは揃っている、と海里は言っていた。だが、
「な……んでッ、こんなものまで……ン、ぁっ――!」
 果たしてこれが生活必需品なのだろうか。小刻みに振動する卵型のそれを、自身の乳首に触れるか触れないかといった場所にあてながら、光樹はぼんやりとそんなことを思う。品のない色をした、いわゆるピンクローター。コードの先に繋がる簡素なコントローラーは、振動を最大にされたまま、ベッドの上だ。
 胸の尖りが、周辺への振動を受けて硬く存在を主張する。上半身で覚えた性感によって、下半身に熱が滞留していた。自ら昂りに触れながらも、しかし乳首への刺激で腰が跳ね、焦れったさに太股を擦り合わせる。
「みーつき、手が止まってる。そんなんじゃイけねえぞ?」
 指摘され、光樹は恨みがましく海里に視線を向けた。しかし、彼は心底愉しそうに口元を緩ませるばかりだ。
 ベッドの上。向かい合わせ。手の届く距離にいるというのに、光樹が彼にすがることはない。今はそれを彼が望んでいないとよく知っているからだ。だからといって、虐げられているとも思わない。光樹自身にとって、恋人である海里の性的な欲求に応えられることは、他ならぬ喜びでしかないのだ。
「ほら、足、どうすんだっけ?」
「うぅー……」
 内腿を、つう、と指先で撫でられ、おずおずと足を大きく開いていく。
「はは、できるじゃん。えらいえらい。エロいとこ丸見え」
「ね、もう、海里……海里がして……おねがい……」
 皮膚の薄い部分に触れられ、ひくつく後孔を凝視されれば、熱を帯びた屹立が刺激を欲して、自然腰が浮いた。勃ち上がったそこをゆるゆると自身で擦ってはみるものの、物足りずにかえって熱が籠るだけだ。
「なに、光樹はオナニーもひとりでまともにできねえの?」
 顔を覗き込まれ、こくこくと何度も頷く。

★スパンキング+おもらし

 胡座を掻いた海里の足の上に、横向きに身体をのせられ、そのまま四つん這いになるよう指示された。
「なにするの……?」
 指示通りの姿勢をとりながら、海里の様子を横目で窺う。
「さあ、なんだと思う?」
 逆に尋ねられ、腰を掴まれた。尻だけを高く上げさせられ、羞恥に思わず身体を捩る。
「あ、これ、はずかし……」
「お仕置きなんだから、恥ずかしくても我慢しないとな」
 言い終わらないうちに、ぱん、と乾いた音。自身では確認できない場所に受けた衝撃に、視界がちかちかと明滅する。
「……――ッた……!」
 突き出した尻がひりひりと熱をもって痛んだ。それを意識して、ようやく平手で打たれたのだと気づく。『お仕置き』の文字が頭を過り、光樹は無意識に喉を鳴らした。
「ほーら、誰だ? ひとりじゃ射精もロクにできない悪いコは?」
 一度、二度、海里の手が尻たぶを打つ。家具のない、まるで箱のような室内は、乾いた打音を明瞭に反響させる。実際の音と反響音、こどものように扱われる羞恥、そして身体に受ける衝撃、痛み。それらがまとめて光樹の感覚を刺激し、淫蕩な脳によって性感へと変換されていく。
「あぅ……ッ、お、おれ、です……! はァん、ッ、ごめんなさ……ッ」
 なじられるままに謝罪を口にすれば、悪戯を咎められるこどものような気分になり、ぽろぽろと涙が落ちてシーツを濡らした。

★パイズリ+フェラ

 広いベッドに押し倒され、海里が腹の上に馬乗りに跨がってくる。
「こ、今度は何?」
 自分の上でTシャツを脱ぎ、デニムパンツの前を寛げる恋人の姿を見つめながら、光樹は尋ねた。その声が期待に震えているのを、自身でも感じる。何しろ、恋人の裸身が目の前にあるのだ。厚い胸板が、割れた腹筋が、太い上腕が。その隅々にまで、丁寧に舌を這わせたくて仕方がなかった。
 蕩けた視線の先で、硬くいきり立ったペニスが顔を覗かせる。
「お前がエッロいから、さっきからチンコ痛ぇんだわ」
 取り出したそれを緩く扱く彼の表情には、情欲の色が濃く滲む。
 大きく張り出した雁首。太い幹の表面には、はっきりと血管が浮き出していた。反り返ったその根本、種を溜め込んで見るからにどっしりとした陰嚢が、存在を主張する。
「なあ、……パイズリしてくれよ」
「ぱ……、ばか、おれ、女の子じゃ――」
 胸元に軽く擦りつけられたペニスが、顎のすぐ下まで迫っている。赤黒く膨張した先端の中心で、鈴口がひくついているのがはっきりと見えた。口ではやんわりと牽制をしながらも、眼前で猛る雄から目を離すことができない。
 下腹が、ずく、と熱をもって疼く。
 欲しい。一刻も早くそれが欲しくて堪らなかった。
 狭い肉壁を抉じ開け、最奥まで貫かれたい。
「誰がムチムチの脂肪の塊で挟めって言ったよ。光樹のでズれって言ってんの」
 そんな内なる欲望に気づきもしない海里は、光樹の頬にぺちぺちと勃起したものをあててくる。陰毛の下で蒸れた皮膚のにおいと、ペニスが纏う雄の香。それらが混ざりあい、嗅覚からも興奮を煽られ、くらくらとする。
「え、ええー……、それって気持ちいいの?」
 誤魔化すように、冗談めかして訊ねる。
「イイかどうかは俺が決めるから。ほら、早く」
 焦れたのか、海里が腰を下ろして光樹の胸元にペニスを押しつけてきた。表情に僅かな必死さが滲んでいるのが見てとれて、光樹は頬が緩みそうになるのを堪えながら、胸元の肉を左右から手のひらで寄せ集める。
「こう……?」
 何とかペニスを挟み込んで、ちらと伺い見る。
「もっと寄せろって」
 息が荒い。ペニスがさらにその硬度と質量を増していく。
 海里がゆるゆると腰を前後させる。
 しかし、元々薄い胸板を構成する肉だけでは、これ以上の圧迫感を与えることは難しい。
「寄せろって言われても……あ、」
 何とか彼の期待に応えたい。思案して、閃いた。
「っ、光樹、」
 海里が息を詰める。
 ペニスを胸で挟み込みながら、光樹がその亀頭部分をすっぽりと口に含んだのだ。

★本番+結腸責め+潮吹き+中出し

 膿んだようにじくじくと存在を主張した、下腹で滞留する熱。
 光樹のペニスは限界まで膨れあがり、刺激を求めて震えながら腹につくほど反り返っている。
「ねえ、そんなのどうでもイイからさ」
 熱い吐息が溢れた。
 甘く蕩けた声で、光樹は誘う。
「挿れてよ。――海里の」
 海里が唾液を飲み下したのが、光樹の目にもはっきりと判った。
 ベッドの上についた両肩両膝で身体を支え、見せつけるように下半身だけを上げる。後ろ手に尻たぶを左右に広げれば、中心の搾まりが物欲しげに収縮を繰り返す。
「海里、かいりィ……」
 甘えた声で名前を呼ぶ。無意識に腰が揺れた。
 軽く尻を叩かれ、乾いた音が部屋に響く。
「もっと広げろよ、ほら」
 背後からそう投げかけられ、光樹は言葉通りに、後孔を晒す十指に力を込めた。途端、僅かに開いた襞の隙間から、どろりと何かが溢れた。
「ん、ふ……、ァ、あ……、や、だめ、出ちゃう……」
 それが、自分が意識を失っている間に海里が放った精液であるということに思い至って、光樹は慌てて右手でそこを押さえた。
 記憶にこそないが、海里が自分の身体で感じてくれたという証なのだ。そう考えるだけで、胸が切なくて堪らない。
「ここ……っ、栓、してッ、海里のおちんちんで――!」
 搾まりにあてた指を僅かにずらし、左手できつく尻たぶを割り広げながら、さらに腰を突き出す。肩越しに海里へと送る視線は、切実な懇願に濡れていた。
「ッ、……っとに、怖えやつだな! お前はよぉッ……!」
 光樹の手ごと尻を掴み、開かせながら、海里は一気にペニスを押し込んでくる。
「ふぁあアア――ッ!」
 恍惚の色濃い嬌声。
「あ、あァ……、は、ン、あッ、キたぁ……! 海里のっ、おちんちん……っ」
 奥まではまりこんだそれを、今度は抜けるギリギリまで引かれた。
 浅いところで繰り返されるピストン。
 ぴったりと隙間なく埋められた淫蕩な肉襞が捲れる気配が、感覚だけで光樹にも伝わってくる。

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