擬人化
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冬を愛した人
アスファルトの表面に、ゆらりと陽炎がたっている。それは決して幻想などではなく、夏特有の強い日差しで道路が熱せられたことで起こった、紛れもない現実だ。 立ち並ぶ街路樹からは、蝉の鳴き声が聞こえる。 …
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ハキリ
古い友人が失踪したのは、もう三年も前のことだ。事件性のない家出としてまともに捜査もされず、彼はそのまま消失した。 彼がいなくなったことで、世界の何が変わるわけでもない。それは至極当然の流れだ。世界…
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アシナガ
重苦しい鉛色の空が、低く唸る。 湿り気を孕んだ空気は既に飽和状態。雨が降り出すのも時間の問題だろう。 窓の外をちらと見やりながら、そんなことをぼんやりと考える。 天候のせいか気分はぐずぐずと燻り、午後の仕事を仕上げる気力はとうに失せていた。