その他

  • 年神さまにおねがい

     今年の夏、妻と離婚した。役所に届けを出したのは、丁度結婚十年目の記念日のことだった。  原因は明らかに僕にあった。毎日、毎日、仕事のことだけを考え、家庭のことなど省みたこともなかったのだ。ただ、妻と…
  • 明く年

     しんと冷えた夜の空気が、開け放った窓から流れ込み、私の体を包んだ。肺の奥まで凍えるような外気は、ぬるま湯に浸かったようにぼんやりと浮かれ現実感を失っていた私の脳を、すぐに覚醒させてくれた。覚醒すれば…
  • 織女星の涙

     七月七日、七夕の夜。 空に眩く輝く天の川に祈れば、願いが叶うという。  幾多の星が帯状に並び、そうして成された大河を眼前に望みながら、織姫は大きく溜息を吐いた。  織機の椅子に腰掛け、細く白い足をぶ…