属性:大学生

  • 罪悪と懐古の底で

     とっくに廃校になったと聞く小学校のそばに、その店はあった。建物全体としては、民家のようでいて、しかし一階部分はガラスの引き戸を左右に開け放たれ、ごちゃりと物が並んだ棚が、外から丸見えになっている。 …
  • 変わらずに、変わりゆく

     つけっぱなしのテレビで流れているのは、年末の忙しない商店街の様子。しかし、それを伝えるレポーターの声はほとんど聞こえてこない。限界までボリュームを絞っているためだ。  そもそもこの部屋で、まともにテ…
  • 耳と、ピアスと、それからぜんぶ

     ベッドに押し倒した相手にキスをしながら、その耳に触れるのは、水無瀬の悪い癖だ。舌を絡ませ、唇を食み、わざといやらしい水音をたてながら、同時に指で耳朶の端を摘まみ擦り、耳介に沿って撫で上げれば、はした…
  • 有意義な食事、そして無慈悲な現実

     気もそぞろ、というのはこういうことをいうのだろう。海田は、手にした箸の先からテーブルの上へと転がり落ちた昆布巻きを、反対の手で口に放り込みながらそう感じていた。  クリスマスを過ぎた辺りから、自身の…
  • 雨の降る夜に、恋は

     それは、幸福な幻想だった。僅かに開いたドアのすき間からこぼれ出した、愛しい紫煙が我が身を包む、身勝手で愚かなまぼろし。  たたん、たたん。錆びた金属製の手すりを雨粒が叩く。打ちっぱなしコンクリートの…
  • 有意義な逡巡

     自身の唇に指で触れる癖がついた。真木がそのことに気が付いたのは最近になってからだが、恐らく二か月ほど前から始まったことだろうとは、当人もすぐに予想がついた。丁度、タバコを吸わなくなった頃だ。  大学…
  • 有意義な支配―或いは依存―

     ただ、そばにいて欲しいと思った。海田の胸にそんな想いが湧いたのは、大学の入学式当日。キャンパス内でビラ配りをしていた真木に、海田は思わず声をかけていた。  愛情に飢えていたわけではない。両親にはそれ…
  • 有意義な怠惰

     この場所には、いつだって陽が当たらない。真木が訪れる度、ここは四階建てコンクリート造りの校舎が作り出す、長い影で覆い隠されていた。  歩道の脇には芝生が植えられていて、五月ということで花壇にはちらほ…
  • クリスマスイブは終わらない

     普段より、街を行き交う人が多いような気がしていた。それは今日が三連休最終日だからか、あるいはクリスマスイブという特別なイベントによる賑わいなのか、それとも年末独特の背中を押されるような慌ただしさなの…
  • にわかぱんだ好きに興味ありません。(4)

     篠沢を顎でダウンさせた人物は、伊奈理沙子。  中国に留学していて、日本に戻ったのはつい先月のこと。  本日より篠沢たちの所属する辻研究室に入るのだという。  今年で二十三歳だというが、篠沢にはとても…

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