要素:非日常
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春色ピアノ
制服の上に羽織ったコートのポケットの中で、指先に触れるかさりと乾いた感触が、鋭い刃先のように胸を刺す。けれど、それでもそこから指を離せないのは、彼女が痛みごと、この現実を受け入れようとしているからだ…
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願いは、ラムネ色の夢
湿気を孕み限界まで熱膨張を繰り返した空気の感触は、静かで穏やかかつ、圧倒的な暴力だ。見えないいくつもの手で荷重をかけてくるそれは、被制圧者の抵抗心すら、ぐずぐずと浸食するように、音も無く崩していく。…
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イトマキニンゲン
アパートを出て、駅に向かうまでの道のりで、『今日はいやに人通りが少ないな』と、なんとなくは思っていた。本当に『なんとなく』だ。けれど、両耳は音楽プレイヤーから伸びたイヤーフォンで塞がれて、外の音なん…