属性:人外

  • 名無しのウサギは如何に啼く

     飼い主が死んだ。彼の目の前で。  違法な薬物に溺れ、結果、惨めに老いた裸身を晒したまま、皮膚の弛んだ胸元を掻きむしりながら、苦しみ悶えて死んでいった。  ざまあない、と思いはすれど、彼はそれを声には…
  • 朱色の午睡

     目が眩むような夕暮れ色に包まれて目を覚ます。ぼんやりとだが、はっきりとした意識がある。〈それ〉に形があるのかと問われれば否だが、形がないことは決して存在しないということではない。形の有無は些細な問題…
  • エンゼル=コードの誘惑

     まばゆい銀色で覆われた半球状の神世界ドォムは、地上から眺め、想像していたよりも、遥かに美しい場所であった。  見る者に圧倒的美を感じさせる要因の最もたるは、この場所に直線が存在しないことだろう。通路…
  • 君に届かぬ我が調べ

     天は無慈悲で、そして残酷だ。  そもそも天とは何であるのか。神か、はたまた世界の創造主であろうか。どちらにしてもそれはとても曖昧で不確かな存在である。  私は許せなかった。  そんな不確定な存在に、…
  • マッチョに言い寄られてました。

     学校から自宅までの道中にある河川敷。その草っぱらに腰をおろして、ぼんやりと川の流れを眺めて時間を潰すのが、高校生になってからの僕の日課だった。  そこで特別、何をするでもない。ただ、自宅で過ごす時間…
  • 冬を愛した人

     アスファルトの表面に、ゆらりと陽炎がたっている。それは決して幻想などではなく、夏特有の強い日差しで道路が熱せられたことで起こった、紛れもない現実だ。  立ち並ぶ街路樹からは、蝉の鳴き声が聞こえる。 …
  • 地獄にて

     巨大な釜は、大地から噴出した業火によって底を炙られ、その中では溢れんばかりに湯が煮えたっている。そしてその湯には、あろうことか、無数の人間が浸かっていた。  ある者は泣き喚き、またある者は釜から出よ…
  • 静謐遠く

     黒霧漂う地平線。そこから広がる空は、群青、茜色を挟み、突き抜ける青、そして目映い金色を同時に湛えている。  大地を覆う温かな土の上に走る濃緑。それは溜まった雨水が腐り果てた末に生じた色だ。双方の色が…

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