単発/読切
-
-
静謐遠く
黒霧漂う地平線。そこから広がる空は、群青、茜色を挟み、突き抜ける青、そして目映い金色を同時に湛えている。 大地を覆う温かな土の上に走る濃緑。それは溜まった雨水が腐り果てた末に生じた色だ。双方の色が…
-
-
モノクロームの色彩
黒一色に塗りつぶされたこの世界で、ひとりの男が昇っている。――階段を。 男の足元には、見えない階段が伸びていた。否、本当は見えていて、しかしただ階段自体が、世界と同じ黒に染まっているだけかもしれな…
-
-
願いは、ラムネ色の夢
湿気を孕み限界まで熱膨張を繰り返した空気の感触は、静かで穏やかかつ、圧倒的な暴力だ。見えないいくつもの手で荷重をかけてくるそれは、被制圧者の抵抗心すら、ぐずぐずと浸食するように、音も無く崩していく。…