単発/読切

  • エンゼル=コードの誘惑

     まばゆい銀色で覆われた半球状の神世界ドォムは、地上から眺め、想像していたよりも、遥かに美しい場所であった。  見る者に圧倒的美を感じさせる要因の最もたるは、この場所に直線が存在しないことだろう。通路…
  • 君に届かぬ我が調べ

     天は無慈悲で、そして残酷だ。  そもそも天とは何であるのか。神か、はたまた世界の創造主であろうか。どちらにしてもそれはとても曖昧で不確かな存在である。  私は許せなかった。  そんな不確定な存在に、…
  • 星空の彼方の母なる星よ

     西暦2315年、人類は地球を捨てた。  月面に幾多のコロニーを築き、そこへと移住したのだ。  それから更に300年経った今では、その理由を知る者は誰もいない。  歴史書によれば、放射能汚染説が有力と…
  • 胡桃割人形

    大事な大事な私の人形。 大きく大きくお口を開けて。 小さな小さな胡桃を咥えて。 そぉれ、いちにいの。 さん。 * * *  小さな町の、秋の夕暮れ。傾きゆく真っ赤な太陽が、少女の影を大きく映しだす。恐…
  • ハキリ

     古い友人が失踪したのは、もう三年も前のことだ。事件性のない家出としてまともに捜査もされず、彼はそのまま消失した。  彼がいなくなったことで、世界の何が変わるわけでもない。それは至極当然の流れだ。世界…
  • アシナガ

    重苦しい鉛色の空が、低く唸る。  湿り気を孕んだ空気は既に飽和状態。雨が降り出すのも時間の問題だろう。  窓の外をちらと見やりながら、そんなことをぼんやりと考える。  天候のせいか気分はぐずぐずと燻り、午後の仕事を仕上げる気力はとうに失せていた。

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